ブレイキング・バッド 〜もし高校の化学教師がドラッグのメタンフェタミンを作ったら〜
今年の5月くらいに書いてEvernoteに保存しておいた文章です。
無料期間のうちに
ブレイキング・バッドを全シリーズ観てテンションがバリ高いのでこのまま感想を書こうと思う
ブレイキング・バッドを観ることになったきっかけはTBSラジオ「たまむすび」で町山智宏さんが勧めていたから
おおざっぱに説明すると
ガンが発覚し、死期がせまった高校の化学教師が家族に何かを残そうと、自分の知識を利用してドラッグを作り、大金持ちになる
みたいな感じ
season1~5全62話まであり僕は約1週間でみた
ほとんど寝てない
物語の序盤は割と退屈に感じられた
主人公ウォルターのガン発覚後、ウォルターが家族にハッキリと言わなかったり、
家庭は平凡すぎたりと刺激が少ないなと思ってた(観終わった後に少し反省した)
これはまぁ僕が事前情報として「物語のエスカレートっぷりがすごい」ということを知っていたのと、別の海外ドラマ「ハウスオブカード」で超人的な家庭を観ていたのが影響してるかも
season1序盤ではウォルターがぼーっとしている事がおおく、考えがわかりにくいし、家族のウォルターのガンへの心配も、退屈なやりとりだった
途中のウォルターがメス(メタンフェタミン)を作ったときや、化学を駆使してドラッグディーラーたちをやっつけるところは興奮するけど、そういった事件の「後始末」のもたつき、ウォルターのごまかしで生じる家族とのモヤモヤしたすれ違いみたいなのがちょっと鬱陶しかった
ここのもたつきに今後かなり重要になるウォルターのプライドみたいなのがあるんだけど、この時は「なんだこのヘンなプライド」みたいな風にしか感じてなかった
少し「最強伝説黒澤」っぽかった
相棒のジェシーがしくじる度に、取り返しがつかなくなる具合が増して面白かった
ジェシーの行動として、ドラッグディーラーのボスと上手い取引が出来なかったり、アホ丸出しの仲間とつるむことでヘマしたり、ドラッグが我慢できなかったりと、そのせいで仕方なしにウォルターも危ない橋をわたらざるを得ない状況が多かった
season1,2、3、4では大体
ジェシーがヘマする→ウォルターが何とかしようとして無謀な行動にでる→最悪の状況になる
って感じがいくつもあった
「元はと言えばジェシーがあんな事しなければ…」と
どんなハプニングも根本はジェシーが悪いなと大体思ってた
まぁその癖、ジェシーは最悪の状況になったとき、無謀な行動にでたウォルターを責めたりする
弁護士ソウルはかなりのキーパーソン
物語が進んで、ジェシーの仲間のヘマから弁護士が必要になり、作中CMとかにでるような有名な弁護士ソウルを雇うようになる
有名といっても、そのCMは胡散臭く、登場シーンの適当っぷりから、「小物感」がめちゃくちゃあふれ出てた
言動は軽く、お金にがめついけど、
ウォルターたちの要求にはほぼ全て対処できる材料をしっかり与えていた
逮捕される身代わりの用意
資金洗浄の環境配備の手際の良さ
盗聴や見張りを完璧にこなす探偵とのつながり
犯罪を手助けする人脈の多さ
ウォルターたちが悩み相談すれば、解決策を用意する感じはドラえもんみたいだった
season3、4で麻薬売買の世界では最強ともいえる人物、ガスにたどり着けたのもソウルのおかげだし
ソウルは物語序盤にあったような、ハッキリしてない感じや後始末がもたついて遅かったスピードを早める触媒として大きく働いた
ガスの魅力とウォルターの魅力
最強のドラッグディーラー、ガスの慎重で完璧な行動には惹かれた
表の顔、裏の顔のギャップが激しすぎるあまり、逆に表の顔がおそろしくてしょうがない
フッと笑顔になるガス、フッと威圧する顔になるガスは一度見た人は忘れないと思う
ウォルターが高純度のメスを製造して、ガスが慎重かつ効率よく売るという関係性はかなり素敵だった
「邪魔者は排除」という思考を完璧に持ってるガスと
「人殺しはしたくねぇんだよ本当は」的な感覚のウォルターとでは大きく違った
「やべーやべーどうしよう考えろ考えろ」という感じで焦りながらも対処するウォルターもなかなか面白く、それはそれで魅力があった
そして例によってジェシー発端の事件が発生して、そこからガスとウォルターでの対立化が起きてしまう
ウォルターの排除をガスが考えるようになり、ウォルターは身の危険を感じるようになる
多分、この身の危険を感じている期間でウォルターの中で、ある程度「自分や家族、ジェシーを危険にするものは排除しなければ」思考が堅くなっていったと思う
そして「ガスの思考を上回らなければいけない」ということがウォルターの計画性を成長させた
心臓止まるかと思うseason5
ウォルターがドラッグを作っていた主な理由は中盤までは「自分の死後、家族が困らないだけの大金を自分の手で稼ぐこと」だった
season5では、ガスのような危険もなくなり、ある程度の大金も手に入ったことで目的は達成できたウォルターだったが、本人はドラッグ作りをやめようとしなかった
これは序盤に僕が軽視していたウォルターの人生のプライドが大きく影響していて、
ドラッグ作りはウォルターの自分の才能の誇示の一つとなっていた
ガスとの対決で、これまでない身の危険を克服したseason5のウォルターは恐ろしく慢心していて、「私ならば対処できる」「私を信じろ」と言った自信に満ちあふれ、「必要ならば排除する」と言う感覚も身についていた
どんどん生産を拡大させていったが、周りの人間が離れていったり、引くほどお金を稼いでしまったことから、案外簡単にウォルターはその後手を引いた
誇示云々よりも愛する家族が離れていく苦悩に耐えられなくなった感じだった
手を引いた後は集めた大金を妻とともに資金洗浄していく生活だったが、
ウォルターは義弟含めた家族、そしてジェシーを傷つけたくはない中、行動力がこれまでの経験から異常なまでに身についてるため、証拠となりうる人間を次から排除していく姿はモンスターそのものだった心臓止まるかと思ったわ
悲しいけど、家族を守るために最終的にジェシーを殺そうとしたウォルターから、ウォルターの中で優先順位みたいなのが出来ているような気がした
家族第一であることは変わりなかったが、これまでのドラッグ製造は「家族のため」でなく「自分の生きがいため」とウォルターが告白したことで、ウォルターのプライド、生き様、ガン発覚時のぼーっとしていた時の感情が、ここで一気にわかった気がした
ウォルターはいままで、自分の中の言い訳の一部として「家族のためを考えてドラッグ製造している」と考え、「才能を発揮できず、不遇と感じていたことを押し殺していた本心を解放したかった」こともあったと思う
もちろん家族を愛していたことは変わりない。それ故、家族を守ろうと必死になる
家族のためにお金を稼ぐ行動としては理解でない事が多かったが、才能を発揮して人生の生きがいを得たいという願いを考えれば、ウォルターホワイトの見通しが良くなった気がした